【No.038】バレンタイン【覇王樹氏作】


「ねえ千草」
テレビを食い入るように見つめていた少女、シャナが問いかけた
「何?シャナちゃん」
問われた女性、坂井千草が答えた
「今テレビで明日はバレンタインで女性が男性にあげるチョコを紹介してたけどチョコを渡すのにどういう意味があるの?学校でもみんなその話をしてた」
「シャナちゃん、バレンタインがどういう日か知ってる?」
「知ってる、バレンタイン司教の命日でしょ?」
その正しいが的外れな答えに千草は何と言うべきか苦笑しながら悩んだ
「あのね、シャナちゃん」
「ん?」
「シャナちゃんの言ってる事は正しいけど最近は違う意味も含んでるのよ」
確かにそうだろう、自分の知識は合っている筈だ、しかしそれだけでは足りないようだ
先程のテレビといい、クラスの女子の様子といい、お菓子を買うのによく使う店の内装といい
(これに関してはいつもより豊富なお菓子が手に入りシャナにとって至れり尽せりだったが)
全てが妙で、そう、楽しそうに妙で、シャナの持っている知識では説明がつかなかった
それが何かわからなかったから、千草に聞いた
シャナはじっと待ち千草の次の言葉を待った
「この日はね、自分が好きな人に自分の気持ちをお菓子に込めて渡す日なのよ」
「じゃあ千草や貫太郎、アラストール、ヴィルヘルミナ、学校のみんなとかに渡すのね」
「う〜ん、それは義理ね」
「ぎり?」
「そう、そういう意味で好きな人に渡すのを義理って言うの、クラスの子たちが話していたのは本命ね」
「ほん、めい?」
「本命っていうのはたった一人にだけ、特別な意味で好きな人に渡すものなの、
前にお弁当を渡すのはその人に好きって言うのと同じ意味だって言ったわよね、でもバレンタインに本命
を渡すのはそれ以上に相手に自分の好きだって気持ちが伝わるものなの」
「・・・・・・」
顔を赤くしながらシャナは聞いていた
成程それなら納得がいく、なんでみんなあんなに浮足だっていたのか、なんでテレビでお菓子を貰った男性があんなに恥ずかしそうで嬉しそうだったのか
自分があの少年に本命をあげる・・・
その少年の慌てながらも喜ぶ様子を想像したら
とても、とっても楽しい気分になってきた
「千草、私本命をあげたい・・・」
千草はニッコリと笑いながら
「そう、じゃあ私も手伝うから早速作りましょう!!シャナちゃんは何を作ってあげたいの?」
と言って早々とどこからかお菓子作りの道具とシャナ用のエプロンを取り出した
「何・・・って、チョコレートじゃなきゃいけないんじゃないの?」
「そんなことないわよ、心が込もっていればなんでもいいのよ」
「そうなんだ、じゃあ私―――がいい!!」

「ふふっ♪シャナちゃんらしくていいわね、じゃあ始めましょうか」 シャナは本命をあげる少年のことをもう一度考えた、すると自然と一人の少女も脳裏に浮かんだ
明日彼女も少年に本命を渡すだろう
(負けない、絶対に負けない!!)
強い気持ちを込めてシャナは言った
「うん!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次の日坂井悠二は朝起きていつもの通りシャナとの鍛練のために今日待ち合わせをした、かつて二人で美しい青空を見た河川敷へと向かった
「あ、いたいた。シャナ〜、今日に限って何でここで会う必要があるんだ?」
しかしシャナはうつむいたまま何も言わない
(やば・・・なんか怒らせるようなことしたかなぁ・・・)
「あの、シャナさん?僕何かしましたっけ?」
シャナはうつむいたままあるものを差し出して来た。
「ん?メロンパン・・・?」
シャナが必死に声を絞りだして言う
「千草に・・・今日は女の子から男の子にお菓子をあげる日だって聞いて・・・」
そう言われて思い出した、去年まで縁がなかった日だからすっかり忘れていた、今日はバレンタインだ
「いらないなら・・・別にいいけど・・・」
声がかなり緊張している
悠二はこの普段は勇猛果敢なフレイムヘイズであるはずの少女のこのギャップに苦笑しつつもこの嬉しさを素直に言葉にした
「そんなことないよ。すっごく嬉しいよ」
「そ、そう・・・ならいいんだけど・・・」
と言いつつシャナはやっと顔を上げて微笑んだ。
「と、ところでシャナ・・・今日僕にこれをくれるってことは本め「うるさいうるさいうるさい!!そんなわけないじゃない!?あれよ・・・ぎり、そうぎりなの!!」
顔を真っ赤にしながらシャナが叫んだ
「わ、わかったよ。そんなに怒らなくてもいいじゃないか。あ、そろそろ帰ろっか、学校に遅れちゃうよ」
「ん、わかった」
立ち上がった時シャナが呟いた
「そんなこと聞かなくても決まってるじゃない・・・」
「ん?何か言った」
「うるさいうるさいうるさい!!早く帰る!!」
「・・・?じゃあ帰ろうか」
帰る道すがら悠二がシャナに
「シャナ、ホワイトデーは楽しみにしててね。」
「ほわいとでー?」
「あ、知らないんだ。ホワイトデーって言うのはね・・・」

この日、もう一人のライバルである少女と激しい戦いがあるがそれはまた別のお話




〜管理人の一言〜
世にはびこるモテ無い男達!ここに集えぇぇぇぇぇぇ!!!!
どうも、「2月14日は何かあったっけ?」と思い返す事ウン十年、管理人です
だって・・・だって・・・いや、この話は墓まで持っていこう
気付いてるそこの君!・・・墓まで持っていってくださいお願いします
さて今回はシャナが悠二にメロンパンを作ってあげるお話でした
決してお菓子メーカーの陰謀は関係ありません
樹氏は「気力を14日の前に気力を養って欲しい」と言っておられた
投稿日は1/25です。これはそこそこじゃないですか?(何
怠け者な管理人に呆れず次回作の投稿をお待ちしております!
さて、ここでメロンパンの製造過程についてですが、まずはイースト菌を・・・
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